大阪地方裁判所 平成5年(わ)321号 判決 1993年11月30日
本店所在地
大阪市中央区内久宝寺町三丁目四番一七号
岸部毛織株式会社
右代表者代表取締役
岸部忠男
本店所在地
大阪市中央区内久宝寺町三丁目四番一七号
ケイエスビー株式会社
右代表者代表取締役
岸部忠男
本籍
大阪府泉大津市千原町一丁目二五番地
住居
同府同市同町一丁目一番一三号
会社役員
岸部忠男
昭和七年九月一〇日生
主文
被告人岸部毛織株式会社を罰金四五〇〇万円に、被告人ケイエスビー株式会社を罰金二一〇〇万円に、被告人岸部忠男を懲役一年八月に各処する。
被告人岸部忠男に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(犯罪事実)
被告人岸部毛織株式会社(以下被告会社岸部毛織という。)は、昭和三七年一月一二日設立された資本金八〇〇〇万円の株式会社であり、昭和六三年一二月二〇日から平成五年一月二二日までの間、大阪府和泉市阪本町四四三番一に本店を置き、毛織物製造業を営むもの、被告人ケイエスビー株式会社(以下被告会社ケイエスビーという。)は、昭和五九年三月一七日設立された資本金三億二〇〇〇万円の株式会社であり(平成元年一月二八日、資本金八〇〇〇万円から三億二〇〇〇万円に変更)、昭和六三年一二月二二日から平成五年一月二二日までの間、右同所に本店を置き、寝装寝具販売業を営むもの、被告人岸部忠男は右両被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたのもであるが、被告人岸部忠男は、
第一 被告人岸部毛織の業務に関し、法人税を免れようと企て、
一 昭和六三年七月一日から平成元年六月三〇日までの事業年度における所得金額が、別紙1記載のとおり、三億二七〇一万六〇六九円で、これに対する法人税額が、別紙3記載のとおり、一億三五六六万二四〇〇円であるにもかかわらず、期末棚卸高の一部を除外するとともに、架空の販売促進費等を計上するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成元年八月三一日、大阪府泉大津市二田町一丁目一五番地二七号所在の所轄泉大津税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二億三六一二万二六六三円で、これに対する法人税額が九七四八万七〇〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により右事業年度の法人税三八一七万五四〇〇円を免れた(別紙3参照)
二 平成元年七月一日から平成二年六月三〇日までの事業年度における所得金額が、別紙2記載のとおり、七億八三三八万〇八五八円で、これに対する法人税額が、別紙3記載のとおり、三億〇七一七万六一〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成二年八月三一日、前記泉大津税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三億八四四〇万五五九一円で、これに対する法人税額が一億四七五八万六一〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により右事業年度の法人税一億五九五九万円を免れた(別紙3参照)、
第二 被告会社ケイエスビーの業務に関し、法人税を免れようと企て、
一 昭和六三年四月一日から平成元年三月三一日までの事業年度における所得金額が、別紙4記載のとおり、八〇六六万六〇六一円で、これに対する法人税額が、別紙6記載のとおり、三三七九万二五〇〇円であるにもかかわらず、架空の支払手数料等を計上するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成元年五月三一日、前記泉大津税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四八五六万六〇六一円で、これに対する法人税額が二〇三一万〇五〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により右事業年度の法人税一三四八万二〇〇〇円を免れた(別紙6参照)、
二 平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度における所得金額が、別紙5記載のとおり、四億五九一五万八〇一六円で、これに対する法人税額が、別紙6記載のとおり、一億八二六七万七二〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成二年五月三〇日、前記泉大津税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二億五九五一万一七一九円で、これに対する法人税額が一億〇二八一万八四〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により右事業年度の法人税七九八五万八八〇〇円を免れた(別紙6参照)。
(証拠) ( )内の漢数字は、検察官請求番号である。
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する平成四年一月二二日付、同年二月三日付、同月一〇日付、同月一七日付二通、同月二五日付、同年三月七日付、同月一二日付(二回)各質問てん末書
一 井内善武の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する平成四年一月二二日付、同年二月三日付、同月二一日付、同年三月二日付(一回)各供述調書
一 検察事務官作成の報告書
判示第一の全事実及び第二の二の各事実につき
一 井内善武の大蔵事務官に対する平成四年二月一二日付供述調書
判示第一の全事実につき
一 被告人の大蔵事務官に対する平成四年三月一二日付(一回)供述調書
一 井内善武の大蔵事務官に対する同年二月一五日付二通、同月二六日付、同年三月二日付(二回)、同月一一日付(一回、二回)各供述調書
一 大蔵事務官作成の同年三月六日付(八)、同月九日付、同月一二日付各査察官調査書
一 登記官作成の同年二月一七日付(四一)、平成五年二月一〇日付(四二)各法人登記簿謄本
判示第一の一の事実につき
一 山岡學、山岡明子、小田哲夫の大蔵事務官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の証明書(三)
判示第一の二の事実につき
一 井内善武の大蔵事務官に対する平成四年三月一一日(三回)供述調書
一 大蔵事務官作成の同月六日付(一〇)、同月一〇日付、同月九日付(一二)各査察官調査書
一 大蔵事務官作成の証明書(六)
判示第二の全事実につき
一 被告人の平成四年三月一二日付(三回)大蔵事務官に対する供述調書
一 井内善武の大蔵事務官に対する同月一一日付(四回)供述調書
一 大蔵事務官作成の同月九日付(一八)査察官調査書
一 登記官作成の同年二月一七日付(四四)、平成五年二月一〇日付(四五)各法人登記簿謄本
判示第二の一の事実につき
一 井内善武の大蔵事務官に対する平成四年三月三日付供述調書
一 藤原伸吉の大蔵事務官に対する供述調書
一 大蔵事務官作成の証明書(一六)
判示第二の二の事実につき
一 大蔵事務官の平成四年三月一二日付査察官調査書
一 大蔵事務官作成の証明書(一七)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は法人税法一五九条一項に該当するので、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年八月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
なお、被告人の判示第一の各所為は被告会社岸部毛織の業務に関してなされたものであるから、被告会社岸部毛織については、判示第一の各所為につき法人税法一六四一項により同法一五九条一項所定の罰金刑に処すべきところ、情状により、同条二項を適用して、右の各罰金額はその免れた法人税の額以下とし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四八条二項により各罪の罰金額を合算し、その金額の範囲内で被告会社岸部毛織を罰金四五〇〇万円に処することとする。
更に、被告人の判示第二の各所為は被告会社のケイエスビーの業務に関してなされたものであるから、被告会社ケイエスビーについては、判示第二の各所為につき法人税法一六四条第一項により同法一五九条一項所定の罰金刑に処すべきところ、情状により、同法二項を適用して、右の各罰金額はその免れた法人税の額以下とし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四八条二項により各罪の罰金額を合算し、その金額の範囲内で被告会社ケイエスビーを罰金二一〇〇万円に処することとする。
(出席検察官)佐山雅彦
(出席弁護人)本井文夫、田村彌太郎
(裁判官 田中正人)
別紙1
修正損益計算書
<省略>
別紙2
修正損益計算書
<省略>
別紙3
税額計算書
<省略>
別紙4
修正損益計算書
<省略>
別紙5
修正損益計算書
<省略>
別紙6
税額計算書
<省略>